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議題

医薬品へのアクセス権

access privilege to medicine

設定会議 第4回WTOドーハ閣僚会議

会議監督   田辺 真貴(北九州市立大学 外国語学部国際関係学科3年)

議長   林 恵(大阪大学 文学部人文学科西洋史学専修 3年)

秘書官  慈道 歩希(名古屋大学 法学部法律・政治学科3年)

報道官  下本 優太(北九州市立大学 外国語学部国際関係学科3年)

使用言語  (公式/非公式/決議)

              日本語/日本語/日本語

 

 

議題背景

人命と特許利益、どちらが大事ですか?

 

 

 

「私たちは知的財産の泥棒ではない。AIDS薬を、私たちの国で製造させてほしい」

AIDS患者は多国籍製薬会社や国際世論に訴えます。

「医薬品アクセスと国内生産を対置させるのはおかしい」

多国籍製薬企業はそう反論します。

 

 私たちは優れた発明と共にその文明を発達させてきました。中世ヨーロッパでは火薬、羅針盤、活版印刷の発明や改良により大航海時代が幕を開けました。産業革命期には蒸気機関の改良により交通網が大幅に整備されました。発明家の功績を認め、彼らのさらなる奮起を促すために、発明の権利を保障するのはごく自然な流れでした。

 発明家の権利の保障、つまり国際的な知的財産権(特許権)の保護は、「工業所有権に関するパリ条約」、国連の専門機関である「世界知的所有機関」、そしてWTOの「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs協定)」のもとなされてきました。

 

 さて、今会議で議論の対象となる「医薬品」は、数ある発明の中でも最も知的財産権(特許権)の保護を必要とする産業分野です。なぜでしょうか?

ある調査結果によれば、新薬化合物が発見されても、その化合物が市場に出回るようになる確率は、約1万5600分の1とされています。現在市場に出回っている医薬品は、製薬会社の研究者による気が遠くなるような努力の結晶とも言えます。そんな医薬品の特許権は多くの国で20年間有効とされていますが、製薬会社はその20年の間に研究者の努力に値するだけの利益のみならず、その医薬品を開発するのに要したコストさらに新薬開発の費用も回収しなければなりません。医薬品の特許保護がなされなくなると、新薬の開発が円滑に行われなくなることになり、現在また将来、特効薬のない感染症に対して効果的な治療法が確立されなくなってしまいます。私たちにとって好ましくない状況であることは明らかです。

 

 では医薬品の価格に原材料費のほか特許料の積み増しがなされ、高額になってしまうことは、仕方のないことなのでしょうか。この疑問を私たちに提起したのが、HIV/AIDSの世界的な大流行です。

1980年代後半から感染者数が大幅に増加したHIV/AIDSは先進国でも途上国でも猛威を振るいました。先進国では効果的な治療薬が開発され、HIV/AIDSが「死の病」から「コントロール可能な慢性疾患」へと変化する一方で、感染者数の9割が生活している途上国においては、治療薬を入手できる人はほとんどいませんでした。その治療薬にもまた高額な特許料が積み増しされていたからです。

その現状に対し、新興国や途上国の政府、また国際人権保護団体が異議を唱えます。この機運は瞬く間に世界に広がり、21世紀を迎えたばかりの国際社会は新たな問題を抱えることになるのです。

 

人命と、特許利益。

みなさんの結論は、どちらを守るのでしょうか。

 

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